近年、パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間見続けることが多くなり、私たちは日々の生活で目を酷使しています。近年では、パソコンのディスプレイなどの表示機器(Visual Display Terminal:VDT)を使用した作業を長時間続けたために、目や身体、心に支障をきたす「VDT症候群」という病名がつけられたほどです。目は精神的ストレスや過労、睡眠不足など体調不良が疲れとして表れやすい器官でもあります。10月10日は「目の愛護デー」です。この機会に目を労わり、目の病気の原因となる疲労をためないような生活を心掛けましょう。
目の仕組みはカメラとよく似ています。ものが見えている時には、毛様体筋がレンズである水晶体の厚みを逐一調節しながらピントを合わせています。特に携帯電話のように画面がチラついたり表示される文字が小さい場合には、よく見ようと凝視するため目にとって大きな負担になっています。 また、パソコンを使う時間が長い人や、1日中テレビ画面を見続けている人も要注意です。液晶画面にピントをずっと合わせなければならない日は、目はヘトヘトになっています。
私たちは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を使って身のまわりの情報をキャッチし、脳に送っています。嗅覚や聴覚も大切な情報源ですが、目は「脳の出張所」といわれる大切な感覚器です。なんと、脳に送られる情報の80%以上は目から入るともいわれています。自然界にはない電波、磁波、色、光、音、振動などが無意識のうちに負荷となり、脳を始め人体に様々なストレスを与えているのです。
目が疲れているということは、その情報を受け取っている脳も疲れているといっても過言ではありません。その結果、頭痛や肩こりが生じたり、集中力や注意力が低下するなどの様々なトラブルを引き起こしてしまいます。 また、ストレスも目には大敵です。涙の分泌が抑制されることで更に目が乾燥しやすくなります。目の疲れは心身の疲労感にまで繋がっているのです。目に起こる症状は「目を閉じて脳を休憩させて」という警告サインです。人体は自らを守るためにSOSサインで知らせているのです。
このように、目の疲れは脳を始め心身の疲労にまで深く関係してきます。目の症状には視力の低下、目のかすみ、白内障、緑内障、加齢黄斑変性など様々です。放っておくと取り返しのつかない状況にもなりかねません。次のページでは、近年“目の現代病”といわれている「疲れ目」「充血」「ドライアイ」についての改善策についてご紹介します。
1,疲れ目
目のまわりの筋肉が疲れた状態(筋肉疲労)のことをいいます。眼球は外眼筋という六本の筋肉に支えられており、眼球が動かない状態が長時間続くと外眼筋が筋肉疲労を起こしてしまいます。
(症状)
目が重い、ショボショボする、目が痛む、かすむ、充血する、頭痛、肩こり、吐き気など
(対策)
目を閉じることで外部の光が入ってこないため、目のまわりの筋肉はリラックスできます。最低6~7時間程の十分な睡眠を心掛けましょう。また、目は温めることで、血流を良くして筋肉の疲労物質を取り除き、筋肉を柔らかくします。目が疲れたなと感じる時は目や目の周囲を温めましょう。その際、熱すぎない程度に温めた蒸しタオルを目に置くことがお勧めです。ただし、充血がひどい時や炎症を起こしている時は温めると症状が悪化するので気をつけましょう。
2,充血
目が赤くなる症状全てが充血ではありません。充血には「結膜の充血」「強膜の充血」「出血」の三種類のパターンが考えられます。出血とは血管が破れて血が出ている状態、充血は結膜や強膜の血管の血液量が増え、血管が拡大することで目が赤くなったように見える状態のことをいいます。
(症状)
目が赤くなる症状全てが充血ではありません。充血には「結膜の充血」「強膜の充血」「出血」の三種類のパターンが考えられます。出血とは血管が破れて血が出ている状態、充血は結膜や強膜の血管の血液量が増え、血管が拡大することで目が赤くなったように見える状態のことをいいます。
(対策)
充血は症状であり、病気そのものではありません。自己防御反応の現れともいえます。現在では専用の目薬で充血を解消できますが、むやみに充血を取り除くことは逆効果です。それは、風邪のときに身体がウイルスと戦うために発熱しているにも関わらず、解熱剤で熱を下げてしまい、風邪を治すどころか逆に長引かせるという結果を招くことと同じです。大切なのは、根本となる疾患を治療することです。あまり症状がひどくない場合は、ゆっくり睡眠をとるなどして目をゆっくり休めるようにしましょう。
3,ドライアイ
目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れることによって涙が均等に行き渡らなくなり目の表面に傷が生じる病気です。いわば、涙の病気といえます。近年ではコンタクトレンズの使用者の増加に伴い、ドライアイ患者数は2,200万人ほどともいわれています。
(症状)
目の乾き、充血、視力障害、眼精疲労、頭痛、肩こりなど
(対策)
環境や生活習慣の改善が挙げられます。パソコンやテレビの画面を見る時は、モニターの位置を目の高さより低い位置にして上目遣いで見ないようにしましょう。また、目の乾燥を避けるために加湿器を使用するといった予防対策も有効です。コンタクトレンズを使用する場合は、防腐剤無添加の人口涙液を使用したり、装用時間を短縮したり、レンズの洗浄や交換の頻度を増やしたりしましょう。ソフトレンズは低含水のもの、ハードレンズはガス透過性のものにし、涙の蒸発を抑えましょう。
目が疲れたように感じるのは、脳が疲れたから休憩したいというサインです。目をつむると目が楽になるのは、目が休んでいるからではなく、脳が休むからです。一般的に目が疲れたら緑が多い自然の風景を眺めることが良いといわれています。自然の緑は目に優しいと言いますが、元を正せば脳に良いというわけです。では、なぜ緑が目に優しいのでしょうか。それは、緑の光は最も人の網膜に負担をかけない波長であり、人は緑色を見るのに労力を要さないためです。長時間緑に囲まれていても、疲れることなく集中力を保つことができるのは、このような目の仕組みが隠されているのです。
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