はじめまして、さちえです。
すきなもの。愛猫。本。
中学生まで一人っ子で、友達の輪に溶け込むのに努力が必要だった私にとって、
本はいつでもそばにいる友達みたいなものでした。
また、本を読み始めると寝食を忘れ、学校にも行かないような子どもだった為、
家中の本を捨てられたこともあります…(笑)
このコーナーは今までに読んで印象深かった本をわたしの主観も混じえて紹介していきたいと思います!!
どうぞごゆっくりお楽しみください。
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今回は、『ラオスにいったい何があるというんですか?』という本をご紹介します。
本を読むのが好きという話をすると、必ず「誰が好き?太宰?漱石?村上春樹?」という風に
歴史に名を遺す大文豪の名前に続き、村上春樹の名前が挙がります。
実は昔から春樹作品は苦手で(きっと単なる食わず嫌い)春樹作品を読み始めたのは
二、三年前からのことです。
春樹作品が好きな友人が、小一時間に渡りある春樹作品の紹介をしてくれたのがきっかけでした。
情熱的なプレゼンテーションに極端に弱く、
目をキラキラさせながら勧められると気持ちがすぐ動いてしまうため、
友人が本の紹介を終える頃にはすっかり春樹氏のファンになってしまっていました。
ただ、誰からどれだけ情熱的に語られても苦手なものが1つだけ。
旅行です。
私は旅行が苦手です。
私の意識の中では保安検査場からが旅行、つまり「非日常」です。
保安検査場より手前の「日常」部分に戻ろうと思ってもそうそう戻れないのです。こわい。
あのゲートをくぐる時「非日常」に自分の身を置くのだと、毎回密かに腹をくくっているのです。
海外?
もちろん行ったことありません。
本の題名になった『ラオスにいったい何があるというんですか?』というセリフは、
ヴェトナムにて「今からラオスに行く」と話した春樹氏に対して現地の人が投げかけた問いです。
実は私も同じような問いを日常的に投げかけていました。
韓国に行ってきたと聞けば「韓国で何したの?」
ハワイに行ってきたと聞けば「ハワイで何したの?」
そして「ご飯食べたよ、エステしたよ、ゴルフしたよ、泳いだよ」などの旅の思い出話を聞いて「楽しそうー」と相槌を打ちつつも、心の中では
(日本でもできるのにどうして海外に行くんだろ・・・・・・)
と思っていたのです。
ラオスの章の最後「まだ問いに対する明確な答えは持たない」と春樹氏は語ります。
「少しの土産物といくつかの光景の記憶・・・
それらの風景はそこにしかなかったものとして、僕の中に立体として今も残っているし、
これから先もけっこう鮮やかに残り続けるだろう。」
ライブDVDを観るのとライブに行くのでは楽しさが違うということは分かるのに、どうして頑なに旅行と旅気分を同じものと思いたがっていたのでしょう。
そもそも、旅行を「非日常のもの」と思い過ぎていたから、旅行についてこんな偏屈になってしまっていたのかもしれません。
春樹氏は、行く先々で野良猫を見つけてはそれを眺め、朝は決まってランニングをし、原稿を書いたりしながらそこに住む人々の暮らしを一歩引いて眺め、必要であれば誰かに声を掛け質問してみたり、夜はバーで好きなお酒を飲んだり、
旅先でも「日常」を過ごすことを楽しんでいるように見えます。
旅行だからといって、特別なことをする必要はないのかもしれません。
いつもと違う場所ではどうやったって「いつもと同じ」にはならないのだから。
「いつもと同じがいつもと違う」ことを楽しめる人が、きっと「旅行好き」と言うのだと思います。
確かに、私のまわりの旅行好きは皆、毎日を楽しんでいる人ばかり。
仕事も私生活も変わらず、自分のペースでうまく時間をやりくりしながら笑顔で暮らしている、そんな人ばかり。
心に余裕があるから、アクシデントにも「こんなものよ」と笑って対処できるのでしょう。
反対に私は「非日常」に身を置いて、ちょっとしたスリルやアクシデントに身を晒すことを
楽しめないくらい(たかだか旅行だとしても!)心に余裕がなかったのかもしれません。
明日何があるのか分からなくても毎日を楽しめているのに、どうして旅行ばかり特別視していたんでしょう。
「非日常」と「日常」の境目は、保安検査場ではなくて自分の中にあったようです。
春樹氏に質問をしたヴェトナム人のどなたかも私のような人なのかもしれません。
いつか巡り巡ってこの本を手に取ることがあるといいな。
ラオスはとても時間がゆっくり流れ、街中にたむろする犬や猫までが穏やかに暮らし、宗教とそれにまつわる物語が当たり前みたいに生活に根付いているとても魅力的な街として描かれていましたよ。
三十歳を目前に控え、私、もうちょっと冒険してみてもいいのかもしれません。
非日常でのアクシデントも「こんなものよ」と笑えるような、心に余裕のある人になれるチャンスかもしれません。
今年が終わるまでに海外旅行、行っちゃおうかな。なんちゃって。
ソファに寝転がったまま十箇所もの土地を旅した「気分を味わった」私は、折り目もハンコもないパスポートをどこにしまったのか思い出せずに、今日も福岡の地でぼんやり生きています。
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